過活動膀胱
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)とは、急に尿意をもよおし、頻尿や夜間の頻尿(ひんにょう)を伴う病気です。過活動膀胱で尿が漏れてしまうことを切迫性尿失禁といいます。
中高年の8人に1人!
日本人の過活動膀胱の推定患者数は810万人とされ、40歳以上の男女の約8人に1人(12.4%)が過活動膀胱ということになります。
過活動膀胱は生活に様々な影響を及ぼします。日中は急な尿意のために仕事や学業、家事に支障が出ます。夜間頻尿で睡眠の質が落ちれば日中の生活にも悪影響を与えます。
特に高齢者の夜間頻尿は転倒や骨折のリスクを高めます。
有効な薬物療法
治療には、まず自分でできる行動療法があります。具体的には水分や塩分を控える、骨盤底筋を鍛える体操、減量などですが、やはり治療の中心は薬物療法になります。
内服薬としては、尿を貯める時の膀胱の広がりを促進する「β3受容体作動薬」や、膀胱の過剰な収縮を抑える「抗コリン薬」などがあります。
ただ、内服薬を3カ月以上続けても十分な効果が得られない場合は難治性と診断されます。
ボトックスも保険適用
難治性や抗コリン剤の副作用で治療継続が困難な患者さんへの治療としては「ボトックス」があります。ボトックスは美容整形の分野でしわ取りに使用されていますが、筋肉の収縮を弱める効果が認められ、ボトックス注射の膀胱壁内注入療法が2020年から保険適用になりました。
1人で悩まず相談を
羞恥心(しゅうちしん)や自尊心のせいでしょうか、過活動膀胱の方の医療機関の受診率は22.7%と低く、男性は36.4%、女性にいたっては7.7%にとどまっています。
ご説明したように、過活動膀胱は薬物療法が有効な病気です。生活の質(QOL)を維持するためにも1人で悩まず、専門医に相談しましょう。
いしい腎泌尿器科クリニック 院長
石井 達矢(いしい たつや)
1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。