相続の基礎知識/(65)相続税の見直し
新年おめでとうございます。現時点で2025年度の税制改正の詳細はまだ確定していませんので、今回は24年度から導入された「生前贈与の課税ルールの見直し」に関して改めて解説したいと思います。
暦年課税に厳しく
これまでのおさらいですが、生前贈与の課税方法には時間をかけて少しずつ財産を子や孫に贈る「暦年課税」と、03年度に新しく創設された「相続時精算課税」があります。
このうち暦年課税はルールの見直しにより、贈与を相続税の対象財産に加算する期間が従来の「相続開始(死亡)前3年以内」から「同7年以内」に延長されました。
この見直しの狙いは、相続税の節税を目的とした過度な生前贈与を抑制することにあると見られています。
加算課税に非課税枠
相続時精算課税は父母・祖父母から子・孫への贈与が2500万円までなら贈与税がかからず、父母らが死んだ時に納税する仕組みです。
こちらは見直しにより110万円までの贈与なら非課税のうえ申告も不要になりました。さらに贈与者が死んだ時の加算対象からも外れました。
政府の狙いは?
相続時精算課税のルール変更は、個人的には使い勝手が良くなった印象があります。
実際、従来の主流だった暦年贈与による節税策は「資産格差を拡大させている」という指摘があり、政府は将来的には精算課税を贈与税の主な課税方式にする狙いがあるという見方もあります。
注意点もあります
ただ、精算課税には難点もあります。贈与する側は60歳以上、贈与される側は18歳以上という条件があり、制度を使うには税務署に届出書を提出する必要があります。
また、いったん精算課税を選ぶと暦年課税には戻れず、贈与者が長生きした場合は暦年課税の非課税枠を長く使った方が得になりやすいという点です。
鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。