セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第142回 長井大橋
長井市街と伊佐沢間の最上川を跨ぐ長井大橋は1931年(昭和6年)に開通した。
架橋が実現するまでには周辺住民の涙ぐましい努力もあった。それ以前は木橋がかかっていたが、住民が当番を決めて何度も旧木橋を往復して通行量を〝水増し〟し、行政に大橋の必要性をアピールしたのであった。
67年の羽越水害にも耐え抜いた頑丈な橋であったが、設計の古さから自動車と歩行者の共存が考慮されていなかった。通学路でありながら歩道もなく、危険にさらされながら子ども達が通うという状態が続いた。
地区の悲願として架けられ、地域に多大な貢献を果たしながら、長井大橋はいつしか住民の冷たい視線を受ける存在となっていった。
開通から70年あまりを経て再び新橋架橋が住民の悲願となった。付近が桜の名所であり、とりわけ伊佐沢には国指定天然記念物「久保桜」があることから「さくら大橋」との名称が要望時点から付けられていた。
地域の念願叶い、さくら大橋は2007年に完成し、7月1日に渡り初めが行われた。着手より完成まで約7年、総工費は37億円だった。
さくら大橋の完成を見届け、長井大橋は長い歴史に幕を下ろした(F)