セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第95回 シネマ旭
かつて七日町四丁目にあった映画館「シネマ旭」は圧倒的な存在感を誇っていた。銀座の和光にも似たその佇まいは、半永久的に映画の街を標榜する山形市のランドマークであり続けると思われたのだが、現在は駐車場に変わっており、往時をしのぶよすがはない。
当時は映画館を指して劇場と呼ぶこともあった。その名の通り、シネマ旭にもスクリーン前には舞台が備えられ、映画に登場する俳優や製作者たちが壇上で舞台挨拶をする例も多かった。
シネコンのように座席が指定されることもなく、2階席のようになった桟敷も含めて、どこに座るかは入場後の自由だった。入れ替え制が導入される以前は、日がな1日見ていることさえ可能だったのである。
20年前の写真には手描きの看板があり、上映後にゴジラグッズを求めてごった返す多くの客が写っている。今年は12年ぶりにゴジラの新作が公開されるが、果たして当時の盛況を取り戻せるのだろうか。(F)