セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第七十四回 上ノ山駅
JRかみのやま温泉駅の前身は国鉄上ノ山駅で、開業は明治34年。平成4年、山形新幹線の開業を機に上ノ山駅はかみのやま温泉駅に改称、その2年後の平成6年に現在の駅舎に改築された。
駅名に「温泉」を加えたのは、観光資源を前面に出して誘客につなげようという狙いがあったのだろう。改築に伴って市役所の線路側にも夜間でも見て取れる赤色のネオン文字がともるようになり、通り過ぎる列車から見える演出が施された。
温泉や冬場のスキーに加え、上山の誘客に大きく貢献したのが上山競馬場だった。平成初期の最盛期には年間40万人の来場者があり、温泉やスキー目当ての来客も加えて駅舎は重要な玄関口としての役割を担っていた。
しかし改築して間もなく温泉、スキー、競馬の客足に陰りが見え始め、平成15年には上山競馬場が45年の歴史に幕を閉じた。
結果的には地味なたたずまいの先代駅舎のほうが上山市の盛況を見ていたことになる。 (F)