セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第四十五回 ZAO楽天地
今ではめったに目にすることがなくなった「スマートボール」。昔はデパートの屋上などに当然のように鎮座していた。
スマートボールは現代のハイテクを駆使したゲーム機に比べれば実にのんびりしたものだった。打ち出したボールが盤面を転がるのをただ見守るだけ。派手な音もしなければ、ピンボールのようにボールをはじき返すこともしない。
それでもボールが穴に入ると何とも言えない充実感が味わえた。いくらボールが出ても換金はできないのが原則だったが、店によってはパチンコと同じように換金できたところもあったようで、そんな店は子どもの立ち入りが禁止されていたように記憶している。
蔵王温泉街にあった写真のスマートボール場「ZAO楽天地」は昼間は絶えず閑散としていた。かつては温泉客で夕方以降はいくらか盛り上がったのだろうが、温泉客そのものの減少に加え、温泉街の散策という粋筋に通じた客が減ったこともあり、昼夜を問わず閑古鳥が鳴くようになってしまったようだ。
スマートボールの衰退は山形に限ったことではなく、各地の温泉街にあった施設は次第に姿を消していった。「ZAO楽天地」が閉店・解体撤去されたのは2007年ごろだったろうか。(F)