セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第三十一回 公衆電話
ほとんどの人が携帯電話を持つようになった今、公衆電話の存在は軽視されるようになり、撤去もかなり進んでいる。かつては商店の店先はもちろん、街角のいたるところに設置されいつでも使えた公衆電話も、最近はコンビニでさえ置いてないところも増えた。
◇ ◇
記憶にある公衆電話の色は初めは赤だった。十円玉を入れると時間無制限でかけられるというおおらかな仕組みだったが、やがて三分間(市内)に制限されるようになった。料金の高い長距離通話のためには大量の十円玉が必要で、店先で両替してもらいながら十円玉を電話機に流し込んで通話する人の姿も珍しくなかった。
そうした不便をなくすためか百円玉が使える黄色電話が現れ、数年ごとに青、緑と公衆電話の色は変わっていった。途中、ピンクや灰色の電話も加わり、テレホンカードもコレクションアイテムになるほど隆盛を極めた。
◇ ◇
「電電公社」の名称が忘れ去られたのと同様、近い将来「公衆電話」も人々の記憶から消えていくのだろうか。 (F)