山形コミュニティ新聞WEB版

セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第二十八回 半田商店

Share!

 今の風景しか知らない人には信じられないかもしれないが、ほんの少し前まで霞城セントラル周辺には民家があり、その庭には樹木が繁茂(はんも)して林のようだった。県都の中心地ながら絵に書いたような田舎風景が広がっていた。

《セピア色の風景帖》 第二十八回 半田商店

 山形駅西口の再開発が始まると誰も気にとめないまま古民家は次々に取り壊されていったが、例外的に注目を浴びたのが半田商店の建物だった。ひときわ目立つ重厚な石造倉庫だったため、その処遇が話題になった。
 半田商店は米や麦の製粉を生業(なりわい)とし、自家製粉、保管、販売までを手がけていたらしい。見るからに頑丈な建物で、そのままなら黙って五十年、六十年は使用に耐えるように思われた。この建物がこの位置にあろうがなかろうが都市計画には何の差し障りもなさそうだったが、撤去を惜しむ声も空しく計画どおり姿を消すことになった。
 撤去が取り沙汰されてからだと思うが、芸工大の学生がこの独特な空間を展示会場として使ったこともあったようだ。移築して保存されるという噂を聞いたような気もするが、果たして本当だったのかは未だ知ることができずにいる。       (F)

記事閲覧ランキング

  • 24時間
  • 週間