セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第二十六回 交番
山形市の交番は長年ひとところにある例が少なくおおかたは街の動勢に合わせるように場所を変えていった。新しい商業地ができ、人の出入りが増えるとみるや、今まであった場所にこだわることなく交番は移転した。そのため古い交番はほとんど残ることなく姿を消したが、官製ながら秀逸なデザインの建物が多かったような気がする。
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山形中央郵便局の北側の道路端にあった本町交番はなぜか多角形で、周囲を睥睨するような建物だった。通常こんな形はロータリーや公園の中などで採用されることが多く、ミスマッチのような気もしたが、周囲の建物にとけ込むことなくその存在を主張していたという意味では有効なデザインであったともいえる。
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現在の「コープひがしはらセンター」の付近の角地には東原交番があった。道路の拡張でなくなってしまったが、煙突かと見まがうような突起を持った建物であった。山形大学に近いこともあり、夜になると酔っぱらった学生の対応で結構忙しかったようだ。
当時の学生は酔った勢いで通りかかった店舗の置き看板を持ち去ったり、深夜にきょう声をあげたりして交番の手を煩わせることが多く、この交番に連行されて反省させられた思い出を持つ人も多いことだろう。
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最近の交番は無機質な建物ばかりになってしまったが、かつてのように地域の目印になるような建物にノスタルジーを感じてしまうのは私だけだろうか。 (F)