セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第十八回 山形駅周辺(2)
山形駅の南側には交番とガソリンスタンドがあり、その隣に小さな飲み屋がそれぞれの看板を掲げていた。
当時は店の名前だけではなく「東光」「米鶴」といった酒の銘柄の看板も多かった。店に酒を納入している業者がチャッカリ自社の宣伝看板も並べさせてもらっていたのだろう。
飲み屋の並びには寿司屋があり、もう少し南に行くとちょっと変わった打ち方をする自家製麺の中華そば屋があった。
手打ちというのかどうか微妙であるが、丸太に体重をかけて麺を伸ばしていく製法だったように記憶している。
今は農協ビルやスポーツクラブになっている辺りには「森旅館」や国鉄のコンテナ置き場があった。
その横で現在工事が進められているアンダーパスが完成すれば、これまで線路の東西をつないでいた五日町踏切の役目を引き継ぐことになっている。それによって五日町踏切が廃止になるというわけではないだろうが、かなり交通量が減ることは間違いない。
今では飾り気のないこの踏切も有人操作だった頃には横に飲み屋長屋を従え、栄えていた。「踏切横で一杯」と縄暖簾をくぐっていたのは列車通勤の勤め人だったのだろうか。 ( F)