セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第十三回 宮町(旧国道十三号沿線)
宮町1丁目と5丁目の間を通る山形天童線は古くは羽州街道として、そして山形バイパスが出来るまでは国道13号として県内の南北をつなぐ重要な路線として機能してきた。
拡幅や渋滞個所の改良が施されて今に至っているが、以前は城下町特有のカギ型の道だったため、中心部から続々と流れてくる車はいったん六日町の「リュウゴイチ書店」の角を左に直角に曲がり、さらに宮町の「草の湯(草賀商店)」の角でまた右に直角に曲がらなければならないという不合理な動きを強いられた。
拡幅の際には当然のことながら沿線の建物も更新された。「長谷川タバコ店」「菱沼燃料店」などは趣のある建物だったが、拡幅にあわせて建て替えられ、全く新しい建物になった。「草の湯」は拡幅時こそ残ったが、その後の銭湯需要の落ち込みには抗(あらが)えず、惜しまれながらも威容あふれるその姿を消した。
JR北山形駅前通りとの交差点には一目でそれとわかるデザインの郵便局があり、地味な街並みに映えるちょっとしたアクセントになっていた。公の建造物がここまで派手なデザインを身にまとうことは珍しく、貴重なものではないかと思われたのだが、これも壊され、撤去された。
通りは一新されてしまったが、わずかに離れたところには古きよき時代を感じさせるハッピー工業関連の一連の建物が今も残っており、昔日の面影を伝えている。 (F)