セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第八回 大手町のクランク
城下町では敵の直線的な進入を防ぐため、カギ型(クランク式)に造られた道が多くあった。山形市内にもその痕跡は各所に残っているが、車社会の現代では交通の支障として槍玉に挙げられることがある。
大手町の税務署の角から北に進む道も二十年ほど前まではクランク状になっており、錦町方面に抜けるには二つの直角カーブを曲がらなければなかった。
ほんの短い区間に菓子屋、八百屋、文具屋、酒屋、風呂屋、靴屋、肉屋など数多くの店舗が密集しており、歩いて通るには変化に富んだ面白い通りだったが、 車を運転する立場の人からは不評を買っていた。
クランクを車の通りやすい緩やかなカーブに変更するため、道の西側に沿っていた店舗は全て解体されることになったが、いずれも木造で味のある建物だった。工事後は新しい道の沿線に移ったが、大半の店舗はこの地から姿を消した。
一方、通りの東側にあった店は解体を免れたため、現在も幾つかは当時のままの姿を保っている。クランク型の旧道跡も半分ほどは歩道に姿を変えながらも面影を現在に残す。
クランクが姿を消す理由となった渋滞が大工事の結果解消されたかというとそうでもなく、時間帯によっては車の長い列が今も見られる。(F)