君たちはどう生きるか
宮﨑駿監督82歳益々盛ん
宮﨑駿監督(82)の10年ぶりとなる長編アニメーション映画「君たちはどう生きるか」が14日から全国の映画館で公開されている。
題名は宮﨑監督が少年時代に読んで感銘を受けた吉野源三郎の同名小説からつけたというが、内容は宮﨑監督のオリジナル。事前に一切の宣伝をせず、あらすじや声優などの情報も封印したことで話題を呼んだが、公開初日の上映を勇んで観て初めて全貌が明らかになった。
時代は太平洋戦争末期の1944年。主人公の少年・牧眞人は空襲で母を亡くす。父は母の妹・夏子と再婚し、眞人を連れて田舎にある母方の実家に疎開する。
夏子は父の子を宿しているが、眞人は夏子を新しい母と素直に認めることができず、よそよそしい態度で接していた。そして父に対しても複雑な思いを抱いていた。
このあたりまでは丹念に物語が進むが、言葉を話す鳥のアオサギが現れ、つわりで臥せっていた夏子が森の中に姿を消したことから物語は動きだす。亡き母の面影を求め、そして行方不明となった夏子を探して、宮﨑監督得意の冒険活劇の様相を呈するようになる!
残忍なインコの国王に仕える兵士たちに追われ、ペリカンの集団も押し寄せる。“わらわら”という空に浮かぶ白い妖精たち、母方の実家で住み込みで働く7人の老婆、そしてラスボスのような謎多き大伯父と、宮﨑アニメならではのキャラクターが登場する。
宮﨑監督の朽ちることない発想による物語と映像に驚き、圧倒される。豪華な声優陣は知らされていなかったので、先入観なく見ることができて没入した。
2人の母への想い、世界へ、国内への様々なメッセージ、過去のジブリ作品へのオマージュなど観客によって自由に受け取れる。エンディングで流れる米津玄師「地球儀」が映画の感動をやさしく包んでくれる。
インコの軍勢、ペリカンの大群を観て想う“烏合の衆”にだけはならぬようにと。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。