相続の基礎知識
相続の基礎知識/(33)おしどり贈与
今回は贈与税の配偶者控除、通称〝おしどり贈与〟のお話です。
夫名義の自宅を妻に
おしどり贈与で想定されるのは、夫名義の自宅を妻に生前贈与するケースです。本来なら多額の贈与税が発生しますが、おしどり贈与を使えば評価額2000万円までの贈与なら税金はかかりません。110万円の基礎控除を加えると2110万円までが無税になります。
条件は婚姻期間20年以上の夫婦で、適用を受けるには贈与税申告が必要になります。
居住用不動産を取得するための金銭の贈与、土地だけ、建物だけの贈与も対象になります。ただ居住用といっても別荘や賃貸アパートは対象になりません。
売却益の特別控除も
おしどり贈与のメリットはこのほか、いったん妻の名義になった自宅を売却する場合、売却益から3000万円が控除できるという特別も受けられます。
また、生前贈与は来年から相続開始前7年間の贈与が相続財産に加算されますが、おしどり贈与で控除される金額は生前贈与加算されません。
さらに生前に贈与されているため、相続財産として遺産分割の手続きを行う必要もありません。
デメリットもあります
一方、デメリットもあります。贈与後は相続財産とはならず、相続税対策で使える小規模住宅等の特例は使えません。また相続税の計算上、配偶者が取得する相続財産は、1億6000万円までは無税なので、あえておしどり贈与を使わない方が最終的な税金を抑えられることもあります。
さらに贈与税はかからなくても登録免許税や不動産取得税はかかります。
専門家に相談を
おしどり贈与を利用した方が得か損かはその家庭の事情により大きく変わります。詳しくは専門家に相談されることをお勧めします。
鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。