相続の基礎知識
相続の基礎知識/(28)延納と物納
相続税は現預金で一括して納めるのが原則です。ただ、相続した財産の大半が不動産で、納税するだけの現預金が手元にない場合はどうすればいいのでしょうか?
5~20年の分割払いも
相続税が相続財産より高くなることはありませんが、相続財産の多くが不動産の場合、手元の現金が増えるわけではなく、相続税を確保するために不動産を売却せざるを得ないというケースが出てきます。
それを避けるための手段の一つが「延納」で、現預金での一括納税が難しい場合に相続税を分割で納税できる制度です。期間は相続財産に含まれる不動産の割合に応じて5年から最長20年まで認められます。ただお金を借りる時と同様、不動産などを担保に差し出し、利子(利子税)を払う必要があります。
不動産を現金代わりに
延納でも納税が難しい場合は「物納」という手段もあり、文字通り、不動産などの「物」を現金代わりに納めることが認められています。不動産で納める場合は「相続税評価額」で現金に換算されます。
相続税評価額は「公示価格」の80%の水準、つまり「路線価」等が目安になります。
物納か売却か
相続税評価額が低めに見積もられているため、場合によっては不動産を売却し、売却資金で納税する方が有利になるケースも出てきます。
ただ、その場合は譲渡所得税が課税されたり、不動産売却に伴う様々な費用も発生します。もちろん、不動産で物納した場合は譲渡所得税は発生しません。どちらが有利なのかは不動産によりけりでしょう。
生前から計画を
なお、延納も物納も申請が必要で、認められないこともあります。
生前に遺産分割と納税の計画は立てておくことをお勧めします。
鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。