相続の基礎知識
相続の基礎知識/(17)後継者問題と相続税
日本の企業総数のうち、99%以上は株式を上場していない中小企業ということは広く知られています。その中小企業のオーナーが亡くなった場合、相続税がどう算出されるかをご存知ですか?
株価をどう算定すれば
まず最初に、相続税を算出するためには企業の価値である株式の価額を確定させる必要があります。上場していれば毎日の取引価格が参考になりますが、非上場の場合はそうはいきません。
では、どのようにして株式の価格を決めるのでしょう。それには大きく分け、その会社の業種と似ている上場会社の株価を参考に計算する「類似業種比準価額」と、その会社の決算書の純資産を参考に計算する「純資産価額」、以上2つの併用方式の3つがあります。
評価額、高めになりがち
いずれにせよ、これらの評価方式によると、内部留保の多い会社ほど自社株の評価額が高くなりがちで、後継者が相続税に頭を痛めることにもなりかねません。
また、中小企業の大半はたたき上げのオーナー経営者ですが、オーナーが自社にお金を貸していた場合、その貸付金は金銭債権として財産となり、相続税の対象になってしまいます。
特例の活用も
これらの負担を軽減するためには、自社株の評価を下げることが必要です。一つの例として、含み損がある不動産を売却すれば純資産が減少し、その年の利益も減少するため株式の評価は下がります。
また様々な要件がありますが、「特例事業承継税制」を利用できれば自社株の評価額に対する相続税額は全額納付を猶予されることもあります。
後継者指名は早めに
今や経営者の平均年齢は60歳超で、後継者不足は深刻です。相続税だけの問題ではなく、事業承継は早めに取り組むことをおすすめします。
鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。