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荒井幸博のシネマつれづれ

〈荒井幸博のシネマつれづれ〉ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

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2人狂いの末に驚きの結末が

 コメディアンを夢見た心優しき青年アーサー・フレックが、病と貧困に苦しんだ末に狂気のジョーカーに変貌し、衝撃的な殺人事件を起こしていくまでを描いた2019年公開の「ジョーカー」の続編。

 あれから2年後。理不尽な格差社会の代弁者となり、彼を盲信する者たちも現れて皮肉にも時代の寵児(ちょうじ)となったアーサーは精神病院に収容されている。看守に虐待されながら死んだように過ごしている彼の前に突然、謎の女性リー(レディー・ガガ)が現れ、互いに惹かれ合うようになっていく。そしてアーサーの裁判が始まる。

 孤独で心優しかった男アーサーと、ジョーカーをこよなく敬愛するリーの愛と狂気の暴走の行方は――。そして衝撃的な結末が訪れる。

 アーサー役は前作に続きホアキン・フェニックスが務める。前作ではアカデミー主演男優賞を獲得し、作品は世界興行収入1500億円の大ヒットとなったことは記憶に新しい。

 ホアキンは前作以上に凄みや怖さ、哀しみを感じさせ、アーサーとジョーカーそのものかと思わせる。また歌姫として有名なガガだが、リーを演じるためにキャリアを積んできたと言っても過言ではないほどのハマり役で驚く。

 副題の「Folie à Deux(フォリアドゥ)」はフランス語で「2人狂い」という意味。アーサーの妄想(もうそう)と狂気がリーに伝染し、それが更に社会にも伝播(でんぱ)していく様子をこの副題が表している。

 本作はあくまでサスペンスエンターテインメント作品だが、コメディ、ラブストーリー、スリラー、アクション、ミュージカルと様々な娯楽映画の要素が詰め込まれている。特にホアキンとガガの歌唱&ダンスが存分に楽しめる。

 ホアキンの兄リバー・フェニックスが23歳で急逝してから今月31日で31年が経つ。あの時、19歳になったばかりで泣きじゃくっていたホアキンがこれほどの名優になるとは!

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。

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