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荒井幸博のシネマつれづれ

愛にイナズマ 10月27日(金)全国公開

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笑いあり、涙ありの家族映画

 折村花子(松岡茉優)は26歳。自ら手がけたオリジナル脚本で子どものころからの夢だった映画監督デビューを目前に控え、人生はバラ色に輝いているかにみえた。
 

 だが世間は甘くない。彼女の下に就くベテラン助監督は花子の若い感性や意欲を否定するばかりか、業界の悪しき慣習や常識を押し付けてきたり、セクハラを迫ってきたり。しかもギャラは支払われず、家賃滞納で大家からは退去を迫られる有り様。

<荒井幸博のシネマつれづれ>愛にイナズマ 10月27日(金)全国公開

  そんなある日、空気は読めないが魅力的な舘正夫(窪田正孝)と運命的な出会いを果たし、本来の明るさを取り戻すかに見えたが、無責任なプロデューサーに欺(あざむ)かれて監督を降ろされ、自分の企画も奪われてしまう。


 失意のどん底に落とされた花子だったが、正夫の励ましもあり、イナズマがとどろく中、10年以上も音信不通だった〝どうしようもない家族〟の力を借りて反撃を決意するのだった――。

 「舟を編む」「茜色に焼かれる」などの石井裕也監督がオリジナル脚本で描く。どうしようもない家族のメンバーは妻や子どもたちから愛想を尽かされた父・治(佐藤浩市)、口は達者だが薄っぺらい長男・誠一(池松壮亮)、真面目でストレスを溜めがちな次男・雄二(若葉竜也)。


 そんな家族に花子は容赦ない質問を浴びせ、カメラを廻し、自分にしか撮れない映画で世間を見返そうとする。


 三浦貴大演じる助監督や、MEGUMIが扮する無責任なプロデューサーは実在の人物がモデルではと思わせるほどのリアリティ。佐藤、池松、若葉と松岡の家族間の激しいやり取りは何故かクスっと笑ってしまう。その家族のかたわらで右往左往する窪田がまた真摯で真っ直ぐであればある程おかしい。


 趣里、仲野太賀、中野英雄、高良健吾、益岡徹、北村有起哉、芹澤興人、笠原秀幸らも適材適所で皆いい!そして泣かされてしまった。
 主題歌エレファントカシマシ「ココロのままに」がまた素晴らしい。


シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。

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