CLOSE/クロース
友情と裏切り、そして後悔
13歳のレオとレミは大の仲良し。活発なレオ、おとなしいレミと、2人は対照的だったが、昼間をともに過ごすだけでなく、夜も一つの布団で眠るほどの大親友だった。
2人は中学校に進学するが、クラスメイトから「付き合っているの?」と興味本位の質問を受ける。レミは気にも留めないが、レオは次第にレミとの距離を置くようになる。気まずい雰囲気の中、2人は些細(ささい)なことで大喧嘩してしまう。
やがて好奇の視線を浴びせられるのを嫌うレオと、いつまでも2人でいたいと願うレミとの意識の齟齬がショッキングな出来事を招くのだった。
第75回カンヌ国際映画祭グランプリ作品。レオとレミを演じる2人の少年は本作で映画デビュー。セリフは少ないが、キラキラ輝く笑顔と一転しての動揺、葛藤、怒り、悲しみの表情の演技が素晴らしい。
メガホンを取ったのは自身がゲイであることを公言しているルーカス・ドン監督。彼は「私たちはセクシュアリティというレンズで人間の親密さを測りがち。この映画で描いたのは、まさにその問題でした。レオとレミのセクシュアリティそのものではなく、人々が彼らの親密さをどう見ているか、いかに図式化して理解し、特定のラベルを貼りたがっているかを描こうとしたのです」と語っている。
少年2人の世界というと本作の翌年にカンヌで脚本賞を受賞した是枝裕和監督「怪物」も想起させられる。
誰もが経験する少年期の後悔と孤独。そして残酷な悲劇と再生をベルギーの美しい花畑や田園の四季を通じて瑞々しく描いた珠玉の作品。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。