山形国際ドキュメンタリー映画祭
4年ぶり通常開催、約130作品
国内外のすぐれたドキュメンタリー映画を集めた「山形国際ドキュメンタリー映画祭2023」が5日、山形市で開幕した。隔年開催の同映画祭は前回がコロナ禍でオンライン開催だったため、通常開催は4年ぶり。18回目となる今回は約130作品を上映、11日に表彰式が行われ、12日に閉幕する。
第1回が開催された1989年は山形市の市制施行100周年の年。6月に中国で「天安門事件」、ドイツでは「ベルリンの壁崩壊」と歴史的な出来事が相次ぎ発生、世界が激動に見舞われた年でもあった。
同映画祭の提唱者は、上山市牧野を拠点にドキュメンタリー映画の制作活動を行っていた小川紳介監督。たまたま小川監督が87年に制作した「1000年刻みの日時計 牧野村物語」の上映運動を行っていた山形県映画センターの高橋卓也さんと私は、小川監督に誘われるまま同映画祭に深く関わっていくことになる。
高橋さんと私がまず取り組んだのは、県内各地の映画好きを誘い、映画祭のボランティアを組織化することだった。それこそゼロからのスタートで、現在は県内外からボランティアが200名ほど参集しているのを見ると隔世の感がある。
小川監督は第1回に参加しただけで1992年にがんのため56歳の若さで亡くなるが、2003年には中国の王兵監督の「鉄西区」が大賞の「ロバート&フランシス・フラハティ賞」に輝くなど同映画祭から世界に羽ばたいている監督も枚挙に暇(いとま)がない。インターナショナル・コンペティション審査員を務めたヤン・ヨンヒ監督もその一人。
今回は、オープニングで故・坂本龍一さんの最後の演奏を記録した映画がアジアで初めて上映されたほか、ロシアの侵攻を受けたウクライナ生まれの2人の監督が同国の様子を生々しく描いた作品が上映されるなど、話題性にも事欠かない。
高橋さんが66歳で急逝(きゅうせい)してから10月15日で1年。小川監督と共に喜んでくれているでしょう。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。