エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
奇想天外、笑って泣ける
破産寸前のコインランドリーを家族で経営している中国系アメリカ人のエヴリンは認知症で手のかかる父親、反抗的な娘、不甲斐ない夫に囲まれ、常にイラついている。
ある日、税金申告の不備を国税庁から指摘され、弱り目に祟り目のところ、突然、気の弱い夫が「僕は君の夫ではなく別の宇宙から来た」「異次元には何千人もの君がいる。彼女たちの協力を得て全宇宙を混乱させている悪を倒して欲しい」と告げるのだった。
夫に言われるがまま訳も分からずマルチバース(並行宇宙)に飛び込んだエヴリンは、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、まさかの救世主として覚醒。全人類の命運をかけた壮大な戦いに挑むが、悪の権化はまさかの――。
エヴリンを演じるのは「ポリス・ストーリー3」「007トゥモロー・ネバー・ダイ」「グリーン・デスティニー」で知られるミシェル・ヨー、夫役は1980年代に子役として「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」「グーニーズ」で人気を博し、本作で20年ぶりに映画復帰したキー・ホイ・クァン。
SF、カンフー、コメディ、アジア系移民、ジェンダーなど様々な要素が詰まった作品。笑って泣ける奇想天外な本作の脚本・監督は「スイス・アーミー・マン」のダニエル・クワンとダニエル・シャイナート。
第95回アカデミー賞が3月12日(現地時間)に発表されるが、本作は作品、監督、脚本など10部門11ノミネートされるなど、授賞式を席巻しそうな勢い。
2020年に「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を獲得するなど、アカデミー賞でアジア勢は存在感を増している。
かつてアカデミー賞で投票権がある「映画芸術科学アカデミー」会員の大半が白人男性だったが、 13年に会長に就任したアフリカ系女性アイザックスの改革で、会員を1700人以上増やし、出身国が59カ国にわたるようになったことが大きいのではないだろうか。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。