山形コミュニティ新聞WEB版

荒井幸博のシネマつれづれ

いちばん逢いたいひと

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万人に生きるチャンスを

 急性骨髄性白血病を患う11歳の少女・楓(かえで)は抗がん剤や放射線などのつらい治療を受ける日々を送っていたが、やがてドナーが見つかる。骨髄移植により病を乗り越えた楓は、生きていることに感謝しながらすくすく育っていく。


 一方、IT企業の経営者で多忙な柳井健吾は娘を白血病で亡くし、家族も崩壊。絶望と孤独の淵で、見知らぬ少女にドナーとして骨髄を提供したことだけが唯一の誇りであり、生きていく張り合いだった。

 ある日、そんな対照的な人生を歩んできた2人の運命が交錯する――。

<荒井幸博のシネマつれづれ>いちばん逢いたいひと

 本作のプロデューサー堀ともこさんは、自身の中学1年生の娘さんが白血病になった時、運よくドナーが現れて命を救ってもらったという経歴を持つ。隣の無菌室に入院していた娘さんの2歳上の少女はドナーが見つからず亡くなったという。


 「すべての人が生きるチャンスを与えられるべき」というのが堀さんの信念で、骨髄バンクへの理解を深めてもらい、1人でも多くの人がドナーになってもらいたいという思いから、10年以上前から映画化の構想を温めていたとか。

 監督は漫画家の石ノ森章太郎さんの長男で、堀さんの想いに共鳴した俳優の丈。成長した楓を演じるのはアイドルグループAKB48の倉野尾成美。共演は高島礼子、三浦浩一、崔哲浩、中村玉緒、不破万作ら。


 撮影は広島県府中市を中心に行われ、尾道水道、瀬戸内海の風景が美しく描かれる。

 1971年に日本公開され大ヒットした「ある愛の詩」に代表されるように、かつて白血病は不治の病だった。現在は骨髄移植で生存の道は開かれるようになったが、ドナーが多ければ多いほど命が救われる可能性は高くなる。


 愛息を白血病で亡くしている小野寺南波子さんを会長とする「骨髄バンクを支援するやまがたの会」の方々が、堀さんに共鳴して力強く上映運動を繰り広げようとしていることを付記しておく。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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