天間荘の三姉妹
生きることの大切さを説く
髙橋ツトムの漫画「天間荘の三姉妹―スカイハイ―」を、「ゴジラFINAL WARS」「ルパン三世」などを手がけ、現在はハリウッドを拠点に活躍する北村龍平が実写映画化した作品。
天界と地上の間にある街・三ツ瀬にある老舗旅館「天間荘」は、生と死の間を彷徨う魂を客にしている。切り盛りしているのは若女将・のぞみ(大島優子)、イルカのトレーナーをしている妹・かなえ(門脇麦)、大女将の母親・恵子(寺島しのぶ)の3人。
ある日、謎の女性イズコ(柴咲コウ)がたまえ(のん)という少女を連れて来る。たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身。交通事故で瀕死の状態に陥っていたという。
イズコはたまえに現世に戻って生きるか、天界に旅立つかを決めるまで天間荘で過ごすよう勧める。天間荘で働き始めたたまえは、生と死の狭間をさまよう様々な客と接するうち、次第に家族のこと、生きることの意味を真剣に考えるようになるのだった――。
ロケ地は仙台東照宮、仙台うみの杜水族館、女川町などで、舞台となった三ツ瀬は〝3・11〟で被災した宮城県の街をイメージしていることがわかる。
重要な役どころを演じるのんは、ご存知の通り三陸海岸沿いの小都市が舞台のNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」でブレイクした女優だ。
原作者の髙橋ツトムは「シリアスな題材だからこそ、それを感じさせないのんの明るいキャラクター性が必要だと感じた」とのんをイメージして描いたという。
女川町出身の中村雅俊、仙台市出身の山谷花純、栗原市出身の高橋ジョージらのご当地俳優も出演しているほか、高良健吾、三田佳子、永瀬正敏、柳葉敏郎ら豪華俳優陣が脇を固める。
筆者の敬愛する先輩や親しい同級生が相次いで亡くなったばかり。故人との思い出に浸り、生きることの意味を考えていた矢先で、心の奥底に響いた感動作。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。