リスペクト
〝ソウルの女王〟の半生
「ローリング・ストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」の第1位にも選ばれた“ソウルの女王”アレサ・フランクリン(2018年没、享年76)の半生を描いた作品。アレサを演じるのは映画デビュー作「ドリームガールズ」でアカデミー助演女優賞を受賞、歌手としてもグラミー賞を制したジェニファー・ハドソン。
高名な牧師を父に、ゴスペルシンガーでピアニストを母に持つアレサはこどものころから歌の才能を発揮、天才少女と呼ばれていた。
だが優しかった母はアレサが10歳の時に他界。厳格な父親のもと19歳で歌手デビューを果たすが、ヒットには恵まれず、父親への反発もあって周囲の反対を押し切ってプレイボーイのテッドと結婚する。
テッドをマネージャーに据え、ブルース色の強いバラード「あなただけを愛して」を発売したところ、これがスマッシュヒットに。だがバンドメンバーが白人だったことに難色を示したテッドのアレサに対する暴力が増していくのだった――。
今夏にはアレサが1972年に行ったゴスペル・コンサートのドキュメンタリー映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」が50年の歳月を経て公開され、改めてアレサのシンガーとしての歌唱力の素晴らしさが再認識させられたばかり。そんな中での公開だけに注目度はいやがうえにも高まる。
母の死、父の束縛や夫の暴力、公民権・女性解放運動への傾倒、歌手としての栄光、アルコール依存症、姉妹との不和など波乱万丈の人生が決して悲劇的ではなく、それらを乗り越えていくアレサの生き様が描かれる。
ジェニファー・ハドソンはアレサ本人が生前に指名していたのだった。ジェニファー の圧倒的な歌声と演技力なくしてアレサの映画化は成し得なかった。見事にアレサを甦らせた。アレサのヒット曲「シンク」 「リスペクト」「ナチュ ラル・ウーマン」「アメイジング・グレイス」が 魂に響く。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。