丸八やたら漬 Komian/紅花の守人
山形ゆかりの2作品
1989年から隔年開催されている第17回山形国際ドキュメンタリー映画祭が7日から14日まで開かれる。コロナ禍で初のオンライン開催となる今回の開幕作品が佐藤広一監督「丸八やたら漬 Komian」。
丸八やたら漬は1885年(明治18年)に山形市で創業した漬物店の老舗だが、コロナ禍による業績不振から昨年5月、惜しまれつつ135年の歴史に幕を下ろした。
Komianとは同社が92年に蔵を改装してオープンさせた飲食店「香味庵まるはち」のことで、映画祭で世界から集まってくる関係者の〝夜の社交場〟にもなっていた。
ドキュメンタリーは老舗漬物店の歴史と香味庵が果たした映画祭への貢献を丹念に追った作品。
企画したのは香味庵まるはちでボランティア運営を担ってきた「山形ビューティフルコミッション」会員の歯科医師・里見優さんで、高橋卓也プロデューサーと佐藤監督が製作した。高橋・佐藤コンビは4年前にも酒田市にあった映画館グリーン・ハウスを取り上げた「世界一と言われた映画館」を製作、話題を呼んだ。
高橋・佐藤コンビは今年また、山形の県花である紅花を栽培・染色・歴史・流通など様々な視点から描いた「紅花の守人」を手掛け、4年越しに完成させた。
ナレーターは山形市高瀬の紅花農家を舞台にした高畑勲監督「おもひでぽろぽろ」で主人公タエ子の声を演じた女優でミュージシャンの今井美樹さんが務めた。「おもひでぽろぽろ」の公開から30周年の今年、山形に嫁いで紅花作りに励んでいるタエ子が「紅花の守人」のナレーションをしてくれたと思いたい。
「丸八やたら漬 Komian」「紅花の守人」は山形の歴史・文化を辿る意味でどちらも見逃せない。
フォーラム山形で前者は映画祭上映後10月22日から11月4日まで、後者は10月10日に「やまぎん県民ホール」で完成披露上映後に10月15日から28日まで上映予定。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。