若手俳優陣 演技力に脱帽
頼もしき若手俳優達
最近の日本映画で、キャストに菅田将暉と仲野太賀の名前があると無条件に観たいと思ってしまう。
菅田は2014年公開の「そこのみにて光輝く」の演技で注目したが、以後の活躍ぶりも目覚ましい。現在公開中の「花束みたいな恋をした」は、やはり菅田が主演して昨年大ヒットした「糸」と同様のラブストーリーで、当初は「2匹目のドジョウ」を狙ったのかと半ば失望したのだが、観ると大間違い。前作のような劇的さはないが、愛し合う男女が年月を経るに従い価値観に隔たりが生じてくる機微が描かれた秀作で、菅田の演技力に改めて感服した。
仲野は08年公開の「那須少年記」で14歳で主演を果たしたが、以降は目立たない脇役が長かった。その実力が認められ、躍進が始まるのは16年に放送されたテレビドラマ「ゆとりですがなにか」でゆとりモンスターを演じてから。
18年公開の「母さんがどんなに僕を嫌いでも」では、子ども時代に母親から虐待されるが、周囲に支えられながら立派に成人し、母親と向き合おうとする心優しい主人公を見事に演じた。
現在公開中の「すばらしき世界」では、役所広司演じる元殺人犯で刑期を終えた直情径行型主人公のかたわらで右往左往する作家志望の気弱な元テレビマンを好演している。
また「あの頃。」ではハロプロアイドル・ヲタクグループの一員にしてひがみ・ねたみ心おう盛なイヤな奴を好演し、主演の松坂桃李を支えている。公開中の2作品ともに脇役ながら彼の演者としての振れ幅の大きさを如何なく発揮している。
菅田・仲野とは対照的に、個人的に吉沢亮と芳根京子にはさして興味はなかったが、公開中の「AWAKE」の吉沢、「ファーストラヴ」の芳根の演技はどちらも素晴らしく、認識を新たにしてしまった。
還暦はとうに過ぎてしまったが、偏見で凝り固まっていると損をすることを痛感したこのところの映画体験だった。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。