山形コミュニティ新聞WEB版

荒井幸博のシネマつれづれ

きみの瞳(め)が問いかけている

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すれ違いドラマの感動作

 明香里(吉高由里子)は自らが運転した車の事故で両親を亡くし、自らも視力をほとんど失うという不幸な目に遭いながらも、電話対応のカスタマーセンターで働きながら前向きに暮らしていた。

<荒井幸博のシネマつれづれ> きみの瞳(め)が問いかけている

 そんなある日、明香里はビルの駐車場の管理のバイトをしていた塁(横浜流星)と出会う。無口で、どこか闇を抱えているような塁は、かつてはキックボクサーとして将来を有望視されていたものの、ある事件がきっかけで心を閉ざしてしまい、今では日雇いのバイトで無為にその日暮らしの生活を送っていた。

明香里とめぐり合い、その健気な明るさに触れることで徐々に心を開いていく塁。やがて2人は愛し合い、ともに暮らすようになる。

 塁は、上司のセクハラに嫌気が差して退職する明香里との暮らしのため、再びボクシングジムの門を叩くことを決意する。総合格闘技の舞台で連戦連勝し、幸せと温もりに満ちた生活を送れるようになった矢先、自分の過去が明日香の失明した事件と接点があるという驚愕の事実を知る。
 

明香里の眼は手術で視力が取り戻せるというが、その手術にかかる費用は300万円。運命は塁をどこまでも追い立ててくるのだった――。

 チャップリンの不朽の名作「街の灯」をヒントに制作された2011年の韓国映画「ただ君だけ」を、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」「僕等がいた」の三木孝浩監督がリメークしたのが本作。SNSの普及などで「すれ違いドラマ」はもう成立しないと思っていたが、見事にすれ違い純愛映画に仕上がっている。エンディングのBTS「Your eyes tell」が感動を一層盛り上げる。


 不幸な過去を背負い光を失いながらも健気に明るく生きる明香里を吉高が好演。過去に闇を抱える元キックボクサー塁を演じた流星もハマリ役。流星は中学3年の時に極真空手世界大会で優勝した経歴の持ち主だけに、総合格闘技の壮絶な闘いの場面はリアリティと迫力に富み見応え充分。

 

シネマパーソナリティー

荒井あらい 幸博 ゆきひろ

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。


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