イップ・マン完結
人気シリーズの最終章
不世出のカンフー・スターで、1973年に32歳の若さで夭折したブルース・リー。そのリーが“師匠”として慕っていたカンフーの達人がイップ・マン。本作はイップ・マンの生き様を描いた「序章」「葉問」「継承」に続くシリーズ4作目にして文字通り完結篇。
時は1964年。最愛の妻をがんで亡くし、自らもがん宣告を受けたイップ・マンはサンフランシスコに渡る。リーと再会し旧交を温めるも、アメリカ人に中国拳法を指導するリーを快く思わないチャイナタウン保守派たちと対立。太極拳の達人ワンとの対決を余儀なくされる。
その対立を経て、異国の地で生きる同胞たちが長年虐げられてきた過酷な現実を思い知る。そんな中、中国武術を敵視する海兵隊軍曹バートンが現れる。
がんに侵されている事実を隠し、同胞の誇りのためにバートンとの最後の戦いへと挑むイップ・マン。それは自分に反発する香港に残してきた息子への無言のメッセージでもあった。
シリーズを通してイップ・マンを演じたドニー・イェンは中国・広州市生まれの57歳。11歳の時にボストンに移住、カンフー映画で活躍するリーに憧れ、リーと同じ黒い中華服を着て自作のヌンチャクを持って学校に通っていたという。
心配した両親の勧めで16歳の時にアメリカを離れて北京市業余体育学校で2年近く武術を学ぶ。リーのように鍛え上げた肉体を誇示することなくスーツ姿が似合うような容貌だが、キックやパンチを繰り出すしなやかで切れの良い身のこなしはさすが。イップ・マンを演じるために生まれたような俳優だ。
イップ・マンは1972年に79歳で死去、リーの死はその7カ月後。リーは11月27日で生誕80年。フォーラム山形で「ブルース・リー4Kリマスター復活祭2020」と銘打ち、9月4日から17日まで「ドラゴン危機一発」「ドラゴン怒りの鉄拳」「ドラゴンへの道」「死亡遊戯」などを上映予定。
シネマパーソナリティー
荒井 幸博
1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。