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「風邪に抗菌薬」は誤り

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 「風邪(かぜ)をひいたら抗菌薬(抗生物質)が効く」とお考えの方はいませんか?結論から言えば、それは大きな誤解です。

ウイルスと細菌

 まず風邪やインフルエンザは感染症です。感染症は大きく「ウイルス感染症」と「細菌感染症」に分かれますが、風邪の約8割がウイルス感染症です。一方、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎(ふくびくうえん)などの多くは細菌感染症です。

 そして抗菌薬は細菌感染症だけに効果があり、ウイルス感染症には効果はありません。ですから風邪の治りが早まったり、風邪の症状である高熱や鼻水が改善するといった効果は全く期待できないのです。

薬剤耐性菌が増殖

 つまり風邪に対して抗菌薬を使用する必要はなく、むしろ使わないことをお勧めします。というのも抗菌薬は必要な時に必要な期間、しっかり使うのが原則です。

 不用意に何度も使うと薬剤耐性菌が増殖し、いざという時に使える抗菌薬が限られてしまう恐れがあるからです。

風邪には咳止めを

 風邪と診断された場合の基本的な治療は対症療法です。特に咳(せき)は体力を消耗し、不眠の原因になる場合もあるため、適宜、咳止めを使用することが良いと思います。

 風邪の咳は、長くても3週間以内におさまることがほとんどです。1カ月以上続く咳は他の要因が重なっている可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。

マイコプラズマ感染症

 ちなみに、咳や発熱、喉(のど)の痛みなど、症状が風邪と似ているものにマイコプラズマ感染症があります。以前はオリンピックイヤーに流行するとされていましたが、近年はこの原則は崩れつつあります。

 このマイコプラズマ肺炎の原因は微生物であり、抗菌薬が有効になってきます。

 発熱、咳が続く場合はお近くの医療機関を受診しましょう。

さとう花の森呼吸器内科クリニック 院長

佐藤 千紗(さとう ちさ)

山形市生まれ。山形西高から北里大医学部に進み、2006年に同大卒業後に山形済生病院で初期研修医。同病院呼吸器内科、山大附属病院第一内科などを経て22年12月に「さとう花の森呼吸器内科クリニック」を開院。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医。

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