尿路結石(下)
前回、尿路結石の原因として男性は食生活、女性はホルモンの低下が多いというお話をしましたが、男女に共通して薬剤が原因で尿路結石ができることがあります。
こうした「薬剤性尿路結石」には、薬剤の成分そのものが結晶化する「薬剤含有結石」と、薬剤の代謝作用の結果としてカルシウムや尿酸結石の形成を誘発する「薬剤誘発結石」の2つがあります。
薬剤含有結石
薬剤含有結石でかつて最も多かった薬剤は、エイズウイルス(HIV)感染症治療薬であるプロテアーゼ阻害薬でしたが、代替薬への変更が進んだことなどから発症は減少傾向にあります。
がんやリウマチの治療薬として用いられるメソトレキセートは、大量投与時に尿細管や集合管の管腔(かんこう)側に結晶ができ、尿細管閉塞による腎(じん)障害をきたすことがあるので注意が必要です。
薬剤誘発結石
薬剤誘発結石では、骨粗しょう症の治療薬であるビタミンDやカルシウム製剤が尿中にカルシウムを多く排出させる結果、カルシウム結石ができやすくなります。
利尿剤であるフロセミドは尿細管に作用してやはり尿中のカルシウム排出を促すため、カルシウム結石を招く可能性があります。
緑内障治療薬でも
また抗てんかん剤であるトピラマートや緑内障の治療薬であるアセタゾラミドなどは、結石形成抑制因子である尿中のクエン酸が減少してカルシウム結石ができやすくなります。
ネフローゼ症候群、若年性リウマチ、白血病などで使用するステロイドの長期間にわたる内服は、カルシウムとリンの尿中排出量を増加させ、カルシウム結石を誘発する可能性があります。
腎臓エコーで検査を
薬剤性尿路結石が心配な方は、健康診断で腎臓エコーを受けてみることをお勧めします。
いしい腎泌尿器科クリニック 院長
石井 達矢(いしい たつや)
1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。