HPV感染と生殖機能
子宮頸(けい)がんの原因として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)は男性に感染すると、生殖機能に影響することもあると報告されています。
HPVを二分すると
HPVは200種類以上あるとされますが、がん化との関連で分類すると、がん化しない「低リスク型」と、がん化しやすい「高リスク型」に分けられます。後者は子宮頸がん、陰茎(いんけい)がん、肛門がん、中咽頭(ちゅういんとう)がん、膣(ちつ)がん、外陰(がいいん)がんなどのリスクを上昇させます。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、性的に活発になってウイルスに曝露(ばくろ)するリスクが高まる前にHPVワクチンを接種する方が効果が高いことから、9~14歳でのワクチン接種を推奨しています。
コルドバ大が調査
肝心の男性の生殖機能への影響ですが、アルゼンチン・コルドバ大の研究チームが今年、成人男性205人(平均年齢35歳)を対象に高リスク型HPVまたは低リスク型HPVに感染した場合の精液の質、酸化ストレス、炎症との関連を検討しました。
高リスク型に感染していたのは20人、低リスク型に感染していたのは7人でした。
精子の細胞死や壊死が!
その結果、精液の質の明らかな低下はどちらの型の感染者にも認められませんでしたが、高リスク型では精子の細胞死や壊死(えし)が明らかに多く、酸化ストレスを与える活性酸素種(ROS)陽性精子が多く認められました。また、高リスク型では精液中の白血球や炎症性サイトカインが低下していました。
生殖機能に障害も
同大では「高リスク型に感染した男性では死滅する精子が増加し、生殖機能が障害を受ける可能性がある」と結論付けています。
生殖機能への悪影響も考慮してHPVワクチンの予防接種が必要かもしれません。
山形徳洲会病院院長
笹川 五十次(ささがわ いそじ)
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。