山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

膀胱がん

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 先日、フリーアナウンサーの小倉智昭さんが膀胱(ぼうこう)がんのため77歳で亡くなりました。小倉さんは2016年、68歳の時にがんを発症して以来、自身の闘病生活を詳細に発信されていました。

禁煙でリスク低下

 小倉さんは1日2~3箱も吸うヘビースモーカーだったそうです。膀胱がんの原因の約50%は喫煙とされ、喫煙者は非喫煙者に比べて2.58倍の罹患(りかん)リスクがあるといわれています。

 要は、膀胱がんにならないためには喫煙しないこと。現在吸っている人も禁煙でリスクは下がり、10年以上の禁煙で2倍以下に低下することが知られています。

血尿を見逃さず

 初期の膀胱がんのサインとしては、痛みを伴わない血尿があります。小倉さんも16年、尿の中に血が混じっていたことで異変に気がついたそうです。

 ここで注意が必要なのは、初期の膀胱がんでは一度出た血尿が半日程度で止まってしまう場合もあることです。このため異変を放置し、発見が遅れるケースがあるのです。一度でも肉眼的血尿が出たら泌尿器科を受診することが大切です。

何より大切なのは命

 小倉さんはがんが見つかった時、医師から「状態が悪いので膀胱の全摘を」と勧められたそうです。その時、小倉さんは男性機能を失うことに未練があり逡巡(しゅんじゅん)したそうですが、2年後に腫瘍から大出血したことで全摘を決断したとか。

 その後、がんは肺や腎臓に転移していくことになり、小倉さんは「情けないよね、命よりそっちの方を優先するなんて」と悔やんでいたという話が伝わっています。

小倉さんの言葉

 小倉さんは「昔はぽっくりいくのが理想だったけど、今思うとがんの方がゴールが見えてくるから準備ができる」とおっしゃっていました。壮絶な闘病生活だったはずですが、この言葉に救われる思いがします。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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