山形コミュニティ新聞WEB版

泌尿器講座

前立腺肥大症(下)

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 今回は「前立腺肥大症」と診断された後の治療法についてのお話です。

第一選択は薬物療法

 治療の第一選択は薬物療法になります。最もよく使われる薬が「α(アルファ)1ブロッカー」「PDE5阻害薬」で、いずれも前立腺部の尿道のよけいな緊張を緩める作用を持ち、排尿障害を改善してくれる効果が見込めます。

 また前立腺を小さくする「5α還元酵素阻害薬」という薬もあります。即効性はありませんが、長期間継続することで約30%ほど前立腺の体積が縮小するとされています。

効果なければ手術に

 薬物療法の効果が不十分だったり、尿閉状態の方、肉眼的血尿が続く場合や膀胱結石ができてしまう場合などは手術を選択します。

 標準治療としては、尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺を切除する「経尿道的前立腺切除術(TURP)」が行われています。

 また、ホルミウムレーザーを使用しての「前立腺核出術」や、グリーンライトレーザーという高出力レーザーを前立腺に照射して前立腺組織を蒸散させる手術もあります。

新しい術式も登場

 2022年からは「経尿道的前立腺吊り上げ術」と「経尿道的水蒸気治療」の2つの新しい術式が医療保険の対象になりました。

 前者は両端に針状の留め具がついた糸で前立腺を固定し、尿道を広げるというやり方、後者は尿道から高温の水蒸気を注入して前立腺組織を壊死させ前立腺を縮めるというやり方です。

県内では始まったばかり

 いずれも手術時間は10~15分と従来の1~2時間より短く、出血も少ないため体への負担が小さいのが特徴です。

 県内ではまだ一般的ではありませんが、いずれ普及していくと思われます。

いしい腎泌尿器科クリニック 院長

石井 達矢(いしい たつや)

1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。山形大学附属病院、山形市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て、2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

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