セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》第188回 展示ギャラリー
老朽化したかつての県民会館は2020年、山形県総合文化芸術館やまぎん県民ホールとしてJR山形駅西に新しく姿を現した。山形市民会館も更新の時期を迎え、完成予想図が発表されている。

旧県民会館、市民会館とも美術、書道、陶芸などの展示芸術に対応できるよう展示ギャラリーを備えていた。資金力のない学生やアマチュアの個人・団体に重宝がられ、長きにわたって多くの芸術家を育てると同時に、芸術活動を通した市民、県民の交流を支える場となっていた。
だが、驚くことに総合文化芸術館を名乗る新県民会館には専用の展示ギャラリーはなく、作品は通路に並べられるだけ。作品照明もなく、鑑賞者数の把握もできない有様だ。
「文化芸術活動の拠点」を標榜する新市民会館は奇抜なデザインで衆目を集めたが、やはり展示芸術に対しては専用設備は計画に盛り込まれないと聞く。
山形テルサ、県民会館ホール、中央公民館ホール、そして170億円超の予算で建設が予定される大小2つの市民会館ホール…。公設音楽ホールが林立する中で、専用展示ギャラリーを外す山形流の文化芸術推進とはどういうものだろう?
通路にパネルを立てれば十分だろうというなら、それは地区の公民館と変わりがない。(F)