セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第130回 北山形駅西口
JR北山形駅はJR左沢線の分岐点に位置するのだが、分岐前ではなく分かれてしまってから駅舎を建てたような特殊な作りになっている。
そのため東口の対面に西口があるわけではなく、左沢線側に大きく寄って西口駅舎が本線に対して斜めに建っている。これは1921年(大正10年)に左沢線の途中駅として開業した経緯によるものだという。
旧西口駅舎は戦前に作られた木造づくりで、末期には白く塗色されていた。当時としては古さというより洒落た雰囲気を醸し出していた。
単に西側の出入り口という役目にはなっていたが、東口駅舎に匹敵するほどの建物の規模から、かつては有人で運用業務をこなしていたであろうことがうかがえた。
列車が着くたび、この古い木造から吐き出され自転車置き場に向かう学生の波が美しくもあったが、しばらく見ないうちにふと気づくと、いつのまにか西口駅舎はプレハブ状のものに置き換えられていた。
学生の流れは以前と変わりはないにせよ、一気に歴史が失われたような喪失感に襲われた。(F)