セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第102回 やたいや
今から13年ほど前、山形市中桜田の住宅街の隅でどんどん焼きの「やたいや」が店舗を構えた。
目立たない場所にあったのだが、1本150円という手軽な価格と、ソース味のほか醤油味も選べたのが特徴で、口コミからか休日には順番待ちが発生するほどの人気だった。注文してから待つことしばし、出来あがるとマイクで呼び出しをしてくれるシステムになっていた。
溶いた小麦粉を熱した鉄板に流して焼き上げ、箸に巻きつける手際の良さをずっと見続けている子どもの姿も多く、エンタテインメントの要素もあった。どんどん焼きだけでは満足しない子どものために水飴も用意してあり、頼むと好みの色をつけてくれていた。
開店10周年記念として記念品を配布するなど、経営は順調かと思われたのだが、3年ほど前の春に訪れてみると店頭に貼り紙がしてあり、理由は不明ながら閉店を告げる知らせが記されていた。
貼り紙を見て残念がる親子連れの姿が印象的だった。 (F)