セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第97回 サテライト朝日
その昔、農村部では繁忙期を過ぎると成人男子が姿を消したものだった。首都圏などに出稼ぎに行っていたからで、兼業農家が増えた今では出稼ぎこそ激減したものの、農閑期には時間を持て余すという男性が相変わらずいるようだ。
そんな男性(中には女性も?)を狙って平成17年、東京に本社を置く不動産会社が朝日町にオープンしたのが県内初の競輪場外車券場「サテライト朝日」だった。
映像を通してとはいえ公営ギャンブルに参加できるというのが売り物で、当初は広大な駐車場に車が列をなした。
だが人は集まるものの、売り上げは伸び悩むという状態が続く。堅実な県民性や地域経済の停滞は東京の不動産会社にとっては誤算だったことだろう。
平成20年9月、サテライト朝日は負債23億円超を抱えて倒産のやむなきに至る。開業からわずか3年。地域活性化や雇用創出という町の期待も水泡に帰した。 (F)