セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第96回 アサヒビール園
バス事業を分離した後、観光・レジャー事業へのシフトを目指した山形交通(現ヤマコー)は平成9年、鉄砲町の本社敷地内にアサヒビール園をオープンさせた。
北海道のサッポロビール園に倣ったと思われるが、夏場のビアガーデンしかなかった山形の地でこの事業が受け入れられるか、どうか――山交にとっては大きな賭けだったことだろう。
当初はもの珍しさもあって大いににぎわい、余勢を駆って蔵王や天童にも出店したが、直後に狂牛病騒動に見舞われる。不況による全国的な消費低迷も誤算だった。
また当初に目論んでいた「バスを使えば飲んでも帰れる」という青写真も、山形っ子のライフスタイルにはなじまなかったようだ。
結局は飲めないドライバーと、付近に2次会のない立地に不満な飲んべえ双方の要求を満たせない状態になってしまい、営業はわずか4年で終了。跡地はパチンコホールに替わった。 (F)