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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第92回 寒映(寒河江市)

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 以前は、規模はどうあれ「市」と名の付くところには大抵地方館があったものである。今は4万程度の人口しかない新庄でも、三吉座、日活、東映など複数館が営業していた。更に人口の少ない上山市でさえ近年までトキワ館が生き残っていたなど、零細地方館を支えるだけの映画人口は保たれていたものだ。

《セピア色の風景帖》 第92回 寒映(寒河江市)

 映画を観たい人がいなくなったわけではない。映画館で観なくなっただけである。レンタルビデオ、BS・CS等の衛星放送、家庭用シアターシステムなど映画館に出かけなくても映画を観る方法は年々整えられてきた。その煽(あお)りをまともに受けて地域に根ざしてきた零細映画館は次々と姿を消していったのである。今、映画館で映画を見たい時、寒河江市民は山形か天童イオンまで出かけて観ているのだろうか。

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 親に手を引かれ、ワクワクしながら怪獣映画を観に、ここ寒映に入った子供も多かっただろう。デートの格好の場所であったかも知れない。老後の楽しみのひとつにもなっていただろう。寒映内部には2階席まであり、畳敷きの座敷になっていたようだ。

《セピア色の風景帖》 第92回 寒映(寒河江市)

 寒映の正面には十数年前のゴジラ映画のポスターが貼られていた。そしてよく見ると、寒映の看板には「明るく楽しい」と書いてあった。映画館に家族で出かけることが「明るく楽しい」ことであった時代はここ寒河江にも確かにあったのである。(F)

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