セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第八十六回 山形市営松原住宅
果樹園が広がる山形市南松原に大規模な市営松原住宅が建設されたのは昭和43~4年ごろだった。住宅にはA~Dのタイプがあったが、メーンの2階建て・3部屋・庭付きの建物が立ち並んだ。
核家族化の進行もあり松原住宅は人気を呼び、抽選により全戸がまたたくまに埋まったと聞く。住宅を学区に抱える南山形小学校、南山形中学校(現在は第九中学校に統合)の人数は急増した。
駄菓子を扱う「すげ商店」「あべ商店」には放送開始直後のウルトラマンのブロマイドやヒモ引き飴クジなどが並び、それらを買い求める子どもたちでにぎわった。
住宅の中心部には現在の食品スーパーに当たる「フードセンター」もあった。日が暮れるまで外で遊び続ける子どもたちや、買い物ついでに四方山話に花を咲かせる若い主婦の姿が目立ち、住宅一帯は活気づいていた。
だが時が流れ、住人が新規に家を購入したり、子どもが独立して高齢者が残されたりするケースが増えていく。建物の老朽化や空き家も目立つようになり、いつしか商店も姿を消していった。
かつて色とりどりの花を咲かせた住宅の庭に雑草が茂るようになったころ、住宅は解体され、跡地には庭のないアパート数棟が建った。 (F)