セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第八十四回 小鳥店
イヌやネコはもちろん、亀やトカゲといったは虫類にまで及ぶ昨今のペット事情だが、ひと昔前は小鳥の飼育もブームだった。
多くの家がブンチョウ、セキセイインコ、ジュウシマツなどを鳥かごに入れて飼っており、子どもへのプレゼントが小鳥だったという話も聞いた。縁日の露店ではニワトリのヒヨコを売る屋台がいくつもあった。
山形市内にも小鳥を扱う専門店がいくつかあり、世話の仕方をていねいに教えてくれたものだった。マニア垂涎(すいぜん)の伝書鳩を扱っている店もあり、愛好者が足環(あしわ)を買いに来たついでに店主と話し込む姿も見られた。
時は流れ、いつしか家庭で鳥を飼っているという話をあまり聞かなくなった。縁日のヒヨコ屋もいつのまにか姿を消し、小鳥たちは身近なものではなくなっていった。
核家族化、共働き夫婦の増加などで小鳥の世話が出来る家庭が減ったからなのか、単にブームが去っただけなのか、理由は分明ではない。
路地の軒先につるされた鳥かごから最後に小鳥のさえずりを聴いたのはいつのことだったろうか。 (F)