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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第五十四回 西蔵王仏塔

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 山形市内から西蔵王山頂を眺めると、テレビ塔だけでなく、光の反射具合のいい時には金色の光芒を放つ物体を目にすることができる。それが何であるかまで興味を持つ人はほとんどいないが…。 

《セピア色の風景帖》 第五十四回 西蔵王仏塔

 西蔵王山頂にあるこの物体は実はお釈迦様。金色(こんじき)の仏像である。大規模な仏塔の上に設けられた計3つの台座の上に鎮座し、山の上から市民を見守っていらっしゃるのである。

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 西蔵王山頂のこのお釈迦様の存在に気づいたのはかなり前になるが、いつ見ても「建設中」で、いっこうに完成に近づく気配がない。10年ほど前までは近くの小屋に住み込みの人がいたのだが、最近はほとんど見かけなくなり、お釈迦さまも未完成のまま朽ち果てるのではないかと思える状態になってきている。

《セピア色の風景帖》 第五十四回 西蔵王仏塔

 住み込みだった人が個人で建立しようと思い立ったのであろうか。現地には寄付を募る掲示物も立てかけてあったが、その掲示板も現地まで到達した人の目にしか入らなず、他人事ながら先行きが思いやられた。
 景気の悪化が叫ばれて久しいが、案の定、お釈迦様の建設計画は資金繰りに行き詰まったのか、中断したまま現在に至っている。
 これがいずれ藪(やぶ)に埋もれて風化するころ、カンボジアのアンコールワットのような雰囲気を醸し出すのではないかと密かに思っている。 (F)

《セピア色の風景帖》 第五十四回 西蔵王仏塔

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