セピア色の風景帖
《セピア色の風景帖》 第二十五回 蔵王駅周辺
JR山形駅の北が北山形駅なら南は南山形駅になりそうだが、実際は蔵王駅。これは昭和二十年代に蔵王が観光山岳百選の首位になり、県がもともとの名称だった金井駅からの変更を国鉄に頼み込んだからだ。
観光客増をもくろんだ名称変更だったが効果はなかったようだ。遠方から来るスキー客は駅名を聞くと「蔵王に着いた」と誤解して降りてしまうが、そこにスキー場はなく、スキー場行きのバスの発着駅は山形駅。混乱を招いただけの名称変更だったような気がする。
駅舎は山小屋風の外観だが観光駅ではなく、かつては貨物駅、現在は東海大山形や山形短大などの学生が利用する通学駅になっている。駅北側にアンダーパスができる以前は学生が行きかう細い道に大型ダンプも侵入してきた。常に接触の危険にさらされ、特に山短近くの踏切には歩行者スペースもなく女学生は命がけで通過していた。
現在は踏切も閉鎖され、駅前商店街からもジンギスカンで有名だった「たかし食堂」などが姿を消した。みはらしの丘の住民利用を見込んで西口建設構想もあったが、これが実現する日はくるのだろうか。 (F)