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セピア色の風景帖

《セピア色の風景帖》 第十六回 羽前千歳駅

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 JR羽前千歳駅は北海道にある有名な「千歳駅」と区別するため「羽前」を冠するようになった小さな駅だ。

《セピア色の風景帖》 第十六回 羽前千歳駅

 仙山線はこの駅から分岐しており、仙山線の全列車が停止する要所であるはずだが、近くに大きな会社や高校、大学がないため乗降客は少なく、現在は駅舎とてない。それでも平成11年までは木造の駅舎が残っていた。

《セピア色の風景帖》 第十六回 羽前千歳駅

 この駅舎は駅が開設された昭和8年当時のものと思われ、こぢんまりとした平屋であった。便所(トイレなどという表記ではなく、そんな代物でもなかった)は駅舎とは別の建物になっており、特に夏は消毒剤の臭いがきつく、入ると目がチカチカしたような記憶がある。

 水洗トイレが普通になった今となってはあのような便所にはなかなかお目にかかれないが、あの臭いが妙に懐かしく思い出される。冬にはストーブで暖をとる人々の姿があり、外が猛吹雪でもゆったりと列車を待つことが出来る雰囲気のいい駅だった。

《セピア色の風景帖》 第十六回 羽前千歳駅

 だが10年ほど前に木造駅舎が撤去されると、列車待ちの客は跨線橋(こせんきょう)を駅舎の代わりとして雨露をしのがなければならないという有様になってしまった。乗り換え駅でありながら、きちんとした駅舎さえ与えられなかったのは残念である。            (F)

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