相続の基礎知識
相続の基礎知識/(32)相続時精算課税
前回、生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方式があり、2023年度の税制改正で年間110万円の非課税枠が新設されたことにより相続時精算課税の使い勝手がよくなったというお話をしました。
今回は注目が集まる相続時精算課税について、さらに掘り下げて解説していきましょう。
納税の先送り
相続時精算課税は特別控除が2500万円と大型の贈与に向いており、贈与を受ける人が税金の支払いを先送りできるメリットがあります。
また株式や不動産などの場合、贈与時点の評価額が採用されます。つまり将来値上がりしそうな株などを贈与すれば節税につながる可能性もあります。もっとも、株などが値下がりすれば裏目に出てしまいますが…。
「使い道自由」も利点
さらに、贈与された財産の使い道が自由なことも見逃せません。
住宅資金の一般贈与は最大1000万円、教育資金は1人当たり1500万円の非課税枠がありますが、相続精算課税は何に使っても構わず、これらと併用が可能です。
デメリットも
一方、相続時精算課税にはデメリットも。相続税計算時に小規模宅地等の特例を適用し、最大で土地の評価額を80%減額することができますが、土地を相続時精算課税で贈与するとこの特例は使えなくなります。また贈与税は減額になってもその他の税金が発生することがあります。
特に不動産を贈与する場合の登録免許税は固定資産税評価額の2%、不動産取得税は固定資産税評価額の3%と、予想外に高くついてしまうこともあります。
判断は総合的に
相続や贈与はその家々で事情が異なり、同じものはありません。自身にとって何が最も有利かを総合的に検討する必要があるでしょう。
鈴木僚税理士事務所 税理士
鈴木 僚(すずき りょう)
1988年(昭和63年)山形市生まれ。2018年に税理士資格取得。趣味はドライブ。